今年9月で創立62周年を迎えるイシワタは、当初から受注生産を中心に操業しています。
言い方を変えると、今までイシワタが作り上げた製品の数だけ、その製造にまつわる物語があるといっても過言ではありません。
その中でも、この天井飾りは、とても印象に残る、そして、イシワタの電鋳を誇りに思える仕事でした。

最初に、土屋金属工芸株式会社様から、見積依頼があったのは、2013年1月。用途は、お寺の天井に使われる、とのことで数量も多く、その後の進展を楽しみにしていました。

その後、翌2014年に入り話が具体化していく中で、土屋様から京都の青蓮院門跡という天皇家に縁のあるお寺が、東山山頂に新しく建設する将軍塚青龍殿に使われると聞き、社員一同びっくりしました。というのは、創立60周年を記念した社員旅行で2013年10月京都へ行った際、皆で訪ねた場所のひとつが青蓮院門跡だったからです。その社員旅行は、あいにく台風と重なり、旅行に行くこと自体が危ぶまれるような天候の中、新幹線の移動中に台風を横切る形で切り抜け、運良く京都に到着することが出来た、といういわく付の旅行でした。

その日の夜、創立60周年を祝う会食のあと、皆で由緒ある青蓮院門跡のライトアップを見に行こう、ということになり、雨の中を歩いて青蓮院に向かいました。わざわざ訪ねた甲斐があり、それは見事な、そして趣のあるお庭を持つお寺です。青蓮院が祀っているのは、青不動ということですので、当然ライトもそれに因んだブルー。みんなで感激しながら眺めた、幻想的なブルーのライトは、深く印象残る忘れがたいものとなりました。

そんな思い出のある青蓮院が新しく建てる青龍殿の天井飾りにイシワタの電鋳が使われる!?こんなに嬉しい、また名誉なことはない、と製造にかかわった全員が心を込めて制作しました。
実際に生産が始まり、原型~電解~仕上まで、気の抜けない作業が続きます。そして、8月に無事納品、ホッとしつつ、青龍殿の完成を楽しみにしていました。

2014年10月4日に完成した京都・東山山頂に新たに作られた「将軍塚青龍殿」は、京都の新しい観光スポットとして瞬く間に人気を博し、ニュースや雑誌への掲載等で何度か目にすることが出来ましたが、イシワタの作った天井飾りは、本堂に納められましたので、完成した姿を観るためには、訪ねるしかない、ということで、その年の12月31日大晦日に京都へ行き、拝見してきました。

戦前の大日本武徳会の京都支部道場の平安道場であったものを解体移築して、保存再生された大護摩堂、京都を一望できる展望台、どれもが素晴らしく観る者の心に響きます。

そして、本堂の天井には、電鋳製天井飾り・・・その美しさに感激しつつ、この歴史に残る仕事を映像に残したい一心で、無理をお願いし、快く撮影の許可をいただきました。
そこで撮った写真が、私たち社員の誇りとなったことは、言うまでもありません。

更に今年5月には、再度、青蓮院門跡を訪ね、門主様、執事長様に直接お会いすることが実現し、画像使用許可をいただくことができたため、晴れてWebでもご紹介することが可能になったのです。
このような素晴らしい仕事をする機会を作って下さった方々に感謝しつつ、100年200年と続く歴史とともにイシワタの電鋳製品が残って行くことの意義を忘れずにいたい、と感じます。